よその国はどうなの?その4です。ベトナム・ハノイ1995(30年前)
子どもたちは、始業前、校門前の空き地で嬉々としてすごす。オトコの子たちは群れかたまって顔を寄せ合ってドラゴンボールのマンガを覗き込む。女の子達は日本とおんなじのゴムとび。飽きると走り幅跳びをはじめた。男女とも赤いネッカチーフがかわいいなあ。
村山首相が泊まったハノイホテルが拠点。高層ビルは、ほかにない。周辺はたくたくさん団地である。5階建て、13棟連なっている。のこのこ迷い込んでいく。Tシャツの若者たちが10人くらいで石の台でビリヤードをしている。ニコニコ和やか。犬を連れて走っていく女の子。手にはドラエモンの漫画本。
500mくらい歩いた先の見本市会場へ入ってみた。入場料3000ドン、30円。おつりをもらうと、そのおばさんの腕の下に幼稚園くらいの女の子が待ちかまえていて、ちょうだいという。あげました。笑顔がかわいい。別の日ですが、観光客がくるところでは、必ずお母さんが子どもを数人引き連れて、<お土産を買って><1ドルおくれ>と全員が熱心に取り囲む。ガイドさんからは断ってくださいといわれているので、ゴメンネ、バイバイ。と逃げ出すわけですが、一度、女の子にほっぺたをつねられました!小さな子がニコニコしながらだから、こっちも笑ってしまう。しかし、こんなの生まれて初めて。
見本市会場は、日本でいえば、デパートのバーゲンセールの雰囲気。どのコーナーも人だかり。すいているのは機械のコーナーだけ。展示もすくなくカタログだけ。お国は西独・中国・韓国だけ。ちょっと質問してみたけど、英語がほとんど通じなくて、まあいいか。人気は化粧品。香水が50円。すごく高いものは200円。そういえば周りの女の人は化粧しています。眉や口紅、それから香水!お化粧して、サングラスとパンタロンできめて、彼氏と腕を組んで闊歩する。いいですねえ。目立ちます。10年前の中国の雰囲気。食べ物もよく売れている。お土産にキャンディを買った。愛想がいい。おつりの計算も早い!ヨーロッパの店員さんより優秀。
団地の広場では小学生が10人くらいで輪になって、いや、団子にかたまってサッカーボールの蹴りあいをしている。キャアキャア楽しげ。女の子は赤いネッカチーフの制服のままでなかなかかわいい。むこうの本格的運動場では若者たちがサッカーをしている。見物もいる。なかなか本格的である。コンクリート敷きである。半パン、ランニングシャツ、裸のやつもいる。素足のやつもいる。みんな怪傑ハリマオみたいな精悍な感じ。しかし、眼が合うのに、誰も<外人だあ>という反応がない。張り合いがないなあ。
テント貼りで木箱の屋台本屋で漫画本を買った。ちばてつやの<おれは鉄平>と<ドラゴンボールZ>を買った。50円。となりのパン屋でパン1個10円。缶ビールを頼んだらバアチャンが、1本?2本?と指で確認すると広い道をむこうへ走っていってしまった。年寄りを走らせる気はなかったのですが、ほどなく、ニコニコ駆けてお帰りです。ショーケースの缶は見本だったんだろうなあ。恐縮恐縮。
広い道路沿いは何でもあります。レストラン、肉屋、本屋、食料品屋。なかでも雑貨屋さんにはなんでもあって、衣類・洗剤・化粧品・バイク部品・カセットレコーダ・工具・文具・・・。おおむね1品づつ並べてある。アメリカのロックやニューミュージックのカセットが100本以上ぎっしり並べてある。市販のケースに曲名がタイプしてあるだけ。海賊版です。1本1万ドン・100円。子どもには高い買い物である。しかし、貼り付いて選んでいる。欲しいんだああ。
どのお店でも英語は通じない。それでも本屋さんにはアメリカの楽譜は沢山あります。フォスターからマイケルジャクソンまで。カーペンターズやビートルズもある。日本のものは見かけない。歌本とカセットテープを買いました。日本にいるベトナム人にあげることになっている。南のホーチミンではアメリカの1950年代ポップスが大流行中。
学校がえりにシクロ(自転車式人力車)に男の子達が7人でワイワイ騒ぎながら載っている。運転手もニコニコしている。200ドン、20円。観光客は1万~2万ドン、100円~200円。夜だと10万ドン、1000円とも聞いた。
広壮なハノイの戦争博物館には実物が展示してある。ジェット戦闘機、戦車、ソ連の宇宙衛星カプセルもある。ミグ・ジェット戦闘機の座席は身動きできない。僕のサイズでこれ。ガイド嬢の説明の端々には<戦勝国の誇り><アメリカに勝った高揚>があふれている。現在でも105万人の軍隊を持つ国である。中国300万人、タイ28万人、日本24万人。300万人の北の政治都市ハノイ、700万人の南の商業都市ホーチミン、なんといってもアメリカが20年間おかねを注ぎ込んだ南のまちは本音ではアメリカ大好きに見えた。
ガイドは女子大生だった。ハノイ国際貿易大学、有名校である。将来は貿易の仕事につきたいという。当然親は共産党のエリートである。日本に留学したい半年50万円かかるというがこの金額は高いですか?と尋ねるので、日本では高くないですよ、と答えた。ベトナムの平均年収は3万円である。大金です。音楽の話では、急に生き生きして、バイオリンを習った。ヨハンシュトラウスのコンサートが年に一回ある。ウインナワルツガがとても好き。昨晩食事したレストランでは、女主人がピアノを弾いてくれたが、先月はそこでコンサートがあって月光ソナタが素敵だった。とふたりでメロディを歌ったりして盛り上がった。